新型コロナウイルス感染症に関する 第2回アンケート調査(歯科) 集計結果


宮城県保険医協会

歯科「新型コロナウイルス感染症に関する緊急調査(第2回)」の結果について

 宮城県内の医師・歯科医師1624名(6/1現在)で組織する宮城県保険医協会は、4月〜5月に実施した表記アンケートの第2回を実施。歯科集計結果の概要をお知らせします。

調査期間:2020年6月5日〜6月22日(第1回2020年4月15日〜5月10日)
送付対象:歯科会員675名(第1回は当会医科歯科会員1617名と会員以外で住所を把握している医師・歯科医師3168人を対象)
送付・実施方法:調査用紙を送付し、ファックスで返送
回答数:78人(11.6%)(第1回は歯科医師(会員と会員以外)52人)

●患者数が減少91.0%、保険診療収入30%以上減が24.2%

 91.0%が昨年同時期(5月)と比較して患者数が減少していると回答しました。1回目の調査に比べ2.5ポイント増加しています。
さらに、今回調査では、保険診療収入が減ったとの回答が84.6%もあることが分かりました。減った割合は30%以下68.2%、30%以上は24.2%となりました。減少したとの回答は前回より9.5ポイント増えており、患者・収入減少は一層深刻になったと言えます。
今回、新たに歯科の訪問診療件数についてたずねたところ、70%が減少したと回答し、減少割合は「70%以上」が38.1%もいることが明らかになりました。在宅患者や入所施設側から訪問を断られるケースが多いとみられます。

●スタッフへの勤務調整を行った35.2%
スタッフの勤務・出勤等の対応について、「特に変更なし」が48.9%と半数近くを占めています。一方で、「勤務調整を行った」35.2%と「勤務日数を減らしてもらった」12.5%を合わせると47.7%になり、「特に変更なし」と同程度であることが分かりました。前回調査(複数回答不可)と比較すると、「変更なし(これまで通り)」とした割合が今回調査で10ポイント近く減っている一方、勤務調整を行った割合が大幅に増えていることが分かりました。患者減、収入減のもとで厳しい対応を迫られていることがうかがえます。

●「風評被害」が深刻化
新型コロナウイルスに関連した歯科医院の「風評被害」について、37.2%が「ある」と回答し、前回調査(19.2%)より倍増しました。具体例は「『歯科が一番危ないとTVで観た』と言われた」、「歯科治療での感染がこわいのでというキャンセルが4、5月は多かった」など寄せられました。その他にも「歯科診療に関してマスコミが感染リスクが高いとの報道をしたため、行きたくないとのキャンセルが数件あった」「マスコミで報じられた歯科医院でコロナウイルスに感染するということを信じ、受診しない人々がいた」などの記載がありました。4月6日付けに厚労省が「不急の歯科治療の延期検討」に関して発出した通知によって、一部のマスコミ間で「歯科治療が危ない」「歯科治療はコロナウイルス感染高リスク」といった報道をしたことが、歯科医院への「風評被害」を深刻化し、患者さんの受診控えに大きく影響したと言えます。

●患者さんの受診控えによる口腔状況の悪化が懸念される
 患者さんの受診控えや訪問診療等で気づいた点、困った点をたずねたところ、多数の意見が寄せられました。その中でも、「患者さんの受診控えのため、基礎疾患のある方など口腔状態の悪化を強く心配しています」「酷くなってから来院するので、以前より抜髄、抜歯等の大変な患者が増える」「困難な治療や重症ケース者が受診しなくなった」「歯肉炎、歯周病の症状がすすんでいる人が増えてしまった気がする」「歯周病が悪化しているケースが散見される」「口腔内の悪化が見られる。中断の患者さんが比較的多い」等、患者さんの受診手控えにより口腔状況の悪化を懸念する意見が多数ありました。訪問診療についても、「訪問診療を2ヵ月程中断(先方の理由)したら口腔内清掃状況の変化が著明であった」「訪問診療している施設入所者で自力歯磨き、義歯脱着困難な患者の口腔内の汚れが気になる」などの意見がありました。

●国・自治体等の助成金や融資等の申請状況
①「持続化給付金」②「国の緊急融資や民間金融機関経由の無利子融資」③「雇用調整助成金」の申請状況についてたずねたところ、②「国の緊急融資や民間金融機関経由の無利子融資」を「申請した」が14.1%、「検討中」が26.9%あり、設問の中では最も申請率が高い結果となりました。①〜③の各制度の申請を「予定していない」が半数以上を占める一方で、「検討中」との回答が①20.5%、②26.9%、③20.5%と一定程度いることに留意する必要があります。①の「持続化給付金」では、「申請したいができない」が9.0%となっています。その理由は「50%以下にならない」「基準に合致しない」との記載があることから、申請条件そのものが厳しいことが考えられます。
 5月診療報酬の一部概算前払い(6月の支払い時に、4月診療分診療報酬に加えて、5月診療分を一部前払いされる。その分は7月の支払い時に減額調整される制度)について「申請した」との回答は0件だったことから、医療機関救済の有効的な支援策とは言えません。

●歯科会員の要望
 国・自治体等に創設・拡充を希望する支援策について、損失への補償(給付金)が36.4%と最も多く、続いて人件費への補助17.3%、納税等の猶予措置11.8%、家賃等の補助10.0%、資金繰りの補助(特別融資など)9.1%の順でした。記載欄には「歯科医療機関が院内感染防止の最大限の努力をしているので、感染リスクが無い点をもっとアピールして欲しい」、「感染対策として購入したグローブや設置したパーテーション費用を補助して欲しい」、「歯科の特殊性も考慮した補助制度があると助かる」等の意見が寄せられました。

●歯科医療崩壊を防ぐため、歯科医療機関への早急な経済的支援対策を
 この間、政府は二次補正予算での医療機関への支援策として「医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援」と「新型コロナウイルス感染症対策従事者慰労金」を実施しています。医療機関の減収補填はしないという立場で、慰労金や補助金などにとどまる内容です。
 日々、感染リスクと隣り合わせで診療にあたっている地域の歯科医療機関への支援が不可欠です。患者の受診減と収入の減少により経営が困難な状況が続けば、閉院や休業、従業員の解雇を検討する歯科医療機関が激増し、医療崩壊が引き起こる恐れがあります。
 今回の調査結果を受け、当会は歯科医療提供体制を維持し地域医療を守るため、政府および宮城県に対し、要望書を提出しています。
 

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