投稿「第8次宮城県地域医療計画のパブリックコメントを前に」


第8次宮城県地域医療計画のパブリックコメントを前に

宮城県保険医協会顧問 北村 龍男

はじめに

 宮城県は現在第8次宮城県地域医療計画を策定中で、12月中旬からパブリックコメントを開始するとしている。
4病院統合・合築問題など、宮城の医療提供体制について考え時である。パブコメの実施を前に、医療計画について整理してみた。都道府県が策定する地域医療計画は、県民に必要な医療と提供することを目的としている分けではないが、積極的にパブコメを発することは重要と考える。

国が示す医療計画の要点

 都道府県の医療計画は、医療法(第30条の4)に基づき、都道府県が厚生労働大臣の定める基本方針(良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図るための基本的な方針)に即して、地域の実情に応じた医療提供体制を確保するために策定する計画とされている。
医療資源の地域的偏在の是正と医療施設の連携を推進するためとして、昭和60年の医療法改正により導入された。
計画期間は6年間。現行の第7次医療計画の期間は2018年度~2023年度である。

国が求める主な記載事項

〇医療圏の設定、基準病床数の算定
・病院の病床及び診療所の整備を図るべき地域的単位として区分。二次医療圏:一般の入院に係わる医療を提供する単位として設定する。三次医療圏:特殊な医療を提供する単位として設定する。
・国の指針で人口規模、患者流入・流出割合に基づき、二次医療圏の考え方を明示し、見直しを促進する。

〇地域医療構想
・2025年の、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4機能ごとの医療需要と将来の病床数の必要量、在宅医療等の医療需要を推計して規定する。

〇5疾病・5事業及び在宅医療に関する事項
・5疾病・・がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患
・5事業・・救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療(小  児救急を含む)

 令和6年度からの第8次地域医療計画には「新興感染症等の感染拡大時における医療」を追加し6事業となる。

〇医師の確保に関する事項
・圏域ごとに、医師確保の方針、目標数、具体的な施策等を定めた「医師確保計画」の策定する。
・産科、小児科については個別に策定する。

〇外来医療に係わる医療提供体制の確保に関する事項。
・外来医療機能に関する情報の可視化、協議の場の設置、医療機器の共同利用等を定めた「外来医療計画」の策定する。

4病院統合・合築と医療計画

 国が各都道府県に求めている医療計画は、数値的には具体的である。現在宮城県で大きな問題となっている4病院統合・合築についても、第8次医療計画の策定の中で検討すべきものである。また、県が検討しなければならないのは、仙台医療圏の提供体制のみを取り上げるのではなく、県全体の医療提供体制の中で、個々の圏域の提供体制を考えなければならないと思う。

第7次宮城県地域医療計画     (平成30年4月公示、令和5年終期)

 現行の宮城県の第7次地域医療計画は、第1編計画の策定、第2編東日本大震災からの復興、第3編医療の現状、第4編医療圏の設定と基準病床数、第5編医療提供体制、第6編地域医療構想、第7編医療費訂正化の推進、第8編計画の推進と進行管理からなっている。

・計画の趣旨
医療法第30条の4に基づき、地域の実情に応じた医療提供体制の確保を図る。
高齢者の医療の確保に関する法律第9条に基づき、医療費適正化を推進する。

・地域医療構想の推進体制
平成29(2017)年に設置した「地域医療調整会議」を活用し、医療機関や関係者と様々なデータを共有し、地域にふさわしい医療提供体制の構築に向けた議論を深め、医療機関等の自主的な取り組みを支援する。
地域医療計画では、中間見直しが勧められているが、4病院統合・合築については地域医療計画策定の中では検討されていないと思われる。(地域医療計画策定の担当は企画推進班、県立病院等の再編は病院連携班が担当)。

国が示す第8次医療計画、地域医療構想等について
(第7回地域医療計画等に関する検討会、R4年3月4日)

 厚労省は、第8次医療計画の策定に、以下の様な提起をしている。

・地域における入院・外来・在宅にわたる医療機能の分化・強化、連携の重要性、地域全体を視野に入れて適切な役割分担のもとで必要な医療を面として提供する重要性。
・新型コロナウイルス感染症対応により浮き彫りになった課題にも対応できるよう、質の高い効率的・効果的な医療提供体制の構築に向けた取り組みを進める。
・生産年齢人口の減少に対応するマンパワーの確保や医師の働き方改革に伴う対応が必要になることを踏まえ、地域医療構想を着実に推進する。

第8次宮城県地域医療計画の策定

〇計画の位置づけ
・「新・宮城の将来ビジョン」の実現に向けた保健医療の基本計画であり、介護保険事業計画との整合性の確保、その他の保健・福祉等関連計画との連携を図りながら策定する。
・計画に内包する計画
宮城県地域医療構想、宮城県医療費適正化計画、宮城県医師確保計画、宮城県外来医療計画。

〇第8次計画での見直しのポイント
(1)新型コロナウイルス感染症の感染拡大による地域医療の課題対応
(2)新興感染症への対応に関する事項の追加
(3)「宮城県医師確保計画」及び「宮城県外来医療計画」の医療計画への内包化

〇検討体制
・各分野において、各種協議会を設置し, 専門的な見地から助言を受けた上で、医療審議会の意見を適切に反映する。
・パブコメや法定意見聴取の実施により、県民等からの意見を募るほか、介護計画との整合性も図る。
・地域医療構想会議では、第2期外来医療計画の策定や、各地域の課題等を検討する。

地域医療構想について
 地域医療計画では地域医療構想が重要な位置を占めている、各都道府県の医療計画策定にあたって、地域医療調整会議を踏まえることは重視されている。
・2014年の医療介護総合推進法の制定により、医療法で地域医療構想が制度化された。
・将来人口推定を基に、2025年に必要な病床数を4つの医療機能毎に推計する。
・地域医療構想を実現するためには、構想区域毎に地域医療調整会議を設置し、関係者の協議を通じて、地域の状況に応じた病床の機能分化と連携を進める。
・調整会議では、各医療機関が選択する病床機能報告制度に基づく、現状の病床数と2025年の必要病床数、医療計画の基準病床数を参考にして、病床の地域偏在、余剰または不足する機能を明らかにし、関係者の協議によって構想区域における課題を解決し、2025年の医療提供体制構築を目指す。
・国は、これらの検討を通じて、高度急性期、急性期病床の削減を計画している。

第8次宮城県地域医療計画の検討の状況

 現在、医療政策課企画推進班において計画の中間案のとりまとめを行っており、11月28日に予定されている第3回医療審議会に提示される。医療審議会で確認されれば、12月中旬から1月にかけ約1ヶ月間意見聴取(パブコメ)が実施される。2月の第4回医療審議会に最終案が提示される。それに基づき答申が行われ、第8次宮城県地域医療計画は4月1日施行される。
 宮城県地域医療調整会議の検討内容については、今後県ホームページに掲載されるが、まとめに今月一杯かかり、掲載時期は未定。

4病院の位置づけについて
 第8次計画の中には、病院名などの記載は行わないことになる。4病院の問題については、病院連携班の担当になる。

 (この項は、県の担当者からの情報)

まとめ

 医療計画の策定にあたっては、検討過程を開示することが重要である。そのことによって、県民、当事者である患者、医療関係者・介護・福祉関係者の理解を深め、意見を反映することが可能となる。
多くの県民がパブリックコメントに参加することが求められる。
現在問題になっている4病院統合・合築問題は、余りにも唐突な提案であった。県民、医療関係者等の検討を一定程度踏まえる医療計画策定の中で一体的に協議し、地域医療計画の中に位置づけ、個々の医療機関の役割の位置づけをはかるべきである。
法制度に基づいて地域医療計画を策定することは重要であるが、医療計画制定の根拠になっている医療介護総合推進法、医療法改正等は、社会保障と税の一体改革を目指すもので、医療計画で国が目指すことを改めて検討する必要がある。

(2023/11/12)

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