県政を問う 第4回「高齢者医療の現場で県政に思うこと」


県政を問う 第4回

「高齢者医療の現場で県政に思うこと」

内科・松島町 丹野 尚

170925丹野尚 毎日の診療の中でとりわけ切実なのは、行き場のない要介護高齢者の多さである。病気が治っても帰る家がない、施設がない、面倒をみる家族がいない。右往左往し、途方に暮れる患者家族、そして、彼らの怨嗟の声を背中に受けながら、落ち着き先を探す退院調整看護師をはじめ担当スタッフの苦労は並大抵ではない。さらには、空いている施設が見つかっても、経済的な負担のために入所できないケースがあまりにも多い。政府厚労省が圧倒的な力で、病院からの高齢入院患者追い出しと、施設から在宅への流れを強引に作ろうとしている中で、自治体の行政にできることは限られているのかなと、つい思ってしまうが、調べてみると、介護保険施設などの整備状況は、都道府県ごとに大きなばらつきがある。
 厚労省の資料によれば、宮城県の特別養護老人ホーム(特老)の定員率(65歳人口100人当たりの定員数)は47都道府県中39位、高齢者向け施設・住まいの整備状況は37位、要介護高齢者数に対する施設・居住系サービスの利用者数の割合は36位、いずれも全国平均を下回っている。地域差の議論では、大都市圏か地方か、地域の病院数の多寡、果ては県民性まで問題になるが、東北6県で見ても、特老は5位で、後の2つは6位である。高齢者福祉の分野では、明らかに宮城県は遅れていると言えるのではないか。
 加えて、要支援1、2が介護保険サービスからはずされて市町村の「新総合事業」に丸投げされた、介護療養型医療施設の「廃止」が決まった、介護保険サービスの自己負担割合が増える予定である、来春の国保の「都道府県単位化」で保険料が増えそうだ、などなど、このところ、患者、要介護者の負担増となる国の施策がつぎつぎと実行されている。同時に、これはそのまま、彼らに身近な医療機関、介護施設の経営困難である。
 国の政策を忠実に実行する県政ではなく、患者、要介護者、県民の目線で仕事をする県政への転換が望まれていると思う。

宮城保険医新聞9・25(1633)号掲載

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