宮城県保険医協会
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県政を問う 第5回「民主的なボトムアップに欠く村井知事」
Posted on
2017年10月10日
by
adminhok
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県政を問う 第5回
「民主的なボトムアップに欠く村井知事」
内科・仙台市 水戸部秀利
村井県政3期12年、1県民としてまた医療関係者として何とか終止符を打ち県政刷新を望む一人である。その思いは、3・11大震災後6年間の再建の姿をみて一層強まっている。
理由は多々あるが、第一に「被災者の医療費免除」の問題である。被災は決して自己責任ではない。被災者の生活再建を最後まで支えるのが政治の役割であり、特に命に直結する医療はその根幹である。国の免除措置打ち切りに端を発するが、継続を求める被災者や医療関係者の声を無視し、県は1年後に支援を打ち切った。支援を継続した被災隣県の岩手や福島と対照的な対応であった。その時知事が発した「減免制度はありがたいと思っていただきたい」という言葉が今でも耳に残っている。村井氏は社会保障制度をお恵みと考えている。
第二は、県が進めてきた地域医療計画見直しと地域医療構想である。二次医療圏は日常医療の自己完結の目安であり、地域文化と一体のものである。国は人口や医療の流出入に一方的な基準を設けて各県に5年毎に医療圏の再編を迫っている。2008年宮城県はその方針に従い、10医療圏を7医療圏に縮小し、さらに、2013年には北部各自治体の反対の声を無視し、被災3県は保留可であったにもかかわらず4医療圏にまで縮小してしまった。被災隣県の岩手(9医療圏)、福島(7医療圏)はそのまま継続の対応をとったのに比べ、お上追従姿勢は際立っている。このままでは地方の医療過疎と文化の破壊に拍車をかけることになる。
さらに、国は医療費削減を旗印に病床削減と入院から在宅への押し出しを各県に「地域医療構想」として検討を求め、2016年に県はそれに応えて計画を提出した。この内容は国の算定ガイドラインを基本的に踏襲したものである。このまま計画が実行されれば、県内の医療や介護のインフラが崩壊し医療難民や介護難民を生み出すことになる。
その他にも、国家プロジェクトの遺伝子研究に被災地住民を供するような「東北メディカル・メガバンク事業」の推進、県民に新たな被ばくを強いる放射能汚染廃棄物の焼却方針の提示、大問題になっている仙台港や石巻港の震災跡地に環境破壊の元凶になるような火力発電所計画が持ち上がる背景には「企業誘致=富県宮城」のような県政の姿勢が根底にある。
彼は国と声を合わせて「創造的復興」を掲げるが、創造的とはその裏に過去の否定や切り捨てを伴うものである。医療に例えれば、傷害部の外科的切除・移植治療に相当し、損傷部養生やリハビリの軽視である。これでは震災で傷ついた地域や住民は救えない。
彼の思考には、軍隊的な上意下達回路はあるが、少数者や弱者の声を聴き尊重するという民主的なボトムアップの回路は欠落している。県民は有能? 多弁な伝達者ではなく民主的なリーダーを望んでいる。特に、中央政権が極右化する中でこのような知事は早急に変えなければならない。
宮城保険医新聞10・5(1634)号掲載
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